先日妻が、
「荷物を整理してたらこんなものが出てきたんだけど」
と、いきなり言ってきたのですが…
見た瞬間に、書いてある文字を読むまでもなく、それが大阪万国博覧会(1970年)の時に発行された金・銀・銅の記念メダルだということがわかったのですが…、
同時にすぐさま、頭が混乱してしまいました。
え?何故こんなものがここにあるんだ。
これは40年近く前に神田の古銭商に売ったはず。
何故だ。
1980年3月。今から37年前のことです。
小・中・高・大と16年の学校生活を終え、もうすぐ就職という第2の人生がスタートするという時です。そう、もうすぐ定年退職という第3の人生を歩み始めようとする僕の今の状況と重なります。
僕はある友人たちと新宿で飲んでました。少し前に行った日本女子大の山関係のサークル主催のスキーツアーの打ち上げに参加していたのです。そして、2次会、3次会の流れの中でその友人たちと、
就職したら遊べなくなるんでどっか行こうぜ
ということになったのです。
どこへ行くか。そうだ沖縄にしよう。
と、何と翌日(数時間後です)の午前中に東京・晴海ふ頭から出る、沖縄行の船に乗ることになったのです。
そのまま、新宿で朝まで飲んで家に帰ると、家族が朝食をとってました。
僕は無言で2階に上がるとタンスの引き出しを開け、
…
あるものをそっと取り出したのです。
そうです。大阪万国博覧会の記念メダルです。
そして、沖縄行の準備をし、もちろん記念メダルもナップザックに入れ、また何事もなかったかのようにこそこそと家を出て神田に向かいました。
神田の古銭商に持っていくと127,000円(記憶違いでなければ)になりました。
それは、父が買っていたメダルでした。
当時(今もかもしれませんが)、少年マガジンやジャンプなどの漫画誌に古銭や切手の広告が出ていて、その記念メダルが高く売れることを知っていたのです。
「沖縄に行こう」ということになった時に、真っ先に頭に浮かんだのがそのメダルのことでした。
そして、その足で晴海ふ頭に向かい、2人の友人と沖縄行のフェリーに乗船したのです。
沖縄までは確か24時間以上かかったような気がしますが、結局、石垣、西表島まで行き、僕の人生の中でベスト3に入る思い出深い旅となったのです。
その数年後です。父に言いました。
「あのメダルなんだけど…、卒業の時に売ってそれで沖縄に遊びに行ったんだよね」
すると、父は嬉しそうに言いました。
「おおそうか。そりゃいいことに使った」
父は4年前に他界しましたが、いわゆる自由放任主義のヒトで(一度も怒られた記憶がありません)、
ただ一度きりの人生だから自分の好きな道を行きなさい
という人でした。
自分で船を持ち海運業の仕事をしていたのですが58歳の時に引退しました。そう、僕は既にその時の父の年齢を超えてしまったのです。
37年ぶりに突如目の前に現れたあの大阪万国博覧会の記念メダルです。
一瞬ほんとうに意味がわかりませんでした。
「え?なんでここにあるの?」
思わず妻に聞いてしまいました。神田で売ったあの記憶は実は夢の中の出来事ではなかったと思ってしまったのです。
「1階のリフォームするから整理してたら、お父さんの荷物の中から出てきた」
「なーんだ、ビックリした。オレの荷物の中からかと思ったよ」
どこの家庭でも買ってたんですかね、大阪万博のメダル。
しかし、僕の学生時代最後の貴重な旅行をプレゼントしてくれたあのメダルが、サラリーマン生活最後のこの時に再び出てくるとは・・・、何か不思議な縁を感じてしまいます。
これを売ってハワイにでも行ってこいということなんでしょうか。(←義父のものを勝手に売っちゃいかんぞ)
あれから40年近く経ってるんで価値ももっと上がってるに違いありません。
いくらするのかNETで調べてみたら、だいたい
45,000円
・・・
くらいで取引されているようです。こんなんじゃ沖縄にも行けんぞ。
でも、父の声が聞こえるような気がします。父の趣味はたった一つ、「株」だけでした。家でも船の中でもいつもラジオで株式市況を聞いていました。
あの父なら間違いなくこう言うと思います。
「いい時に売ったな」
と。
西表島マリウドの滝にて
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